慢性閉塞性肺疾患(COPD)②:呼吸機能を悪くしないための早期診断と治療について
- 2022年11月30日
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD),呼吸器内科
COPDは長期間の喫煙によって呼吸機能が低下していく病気です。COPD患者は全国に500万人程度いると推定されていますが、実際に診断されて治療を受けている人は一握りであるとも言われています。
COPDは進行してしまうと、息切れや咳、痰などの症状が慢性的に続き、生活に支障をきたすようになってしまいますが、早期に診断して治療を受けると呼吸機能の低下を防ぐことができます。
今回は、「どんな症状があれば受診した方がいいのか?」「COPDの検査にはどのようなものがあるのか?」「COPDの治療は?」など、COPDの診断と治療について解説していきます。
COPDになっている可能性はありますか?
COPDの原因は喫煙なので、喫煙歴があり、咳や痰、息切れなどの症状がある方にCOPDがある可能性があります。しかしながら、早期には自覚症状が軽く気づかれていない場合も多いです。
年齢や喫煙歴、症状について入力するだけでCOPDの可能性があるかどうかを判断できる簡単な質問表があります。以下のサイトで簡単に判定できますので、まず確認してみましょう。
COPDスクリーニングのための質問票(COPD-Q)|COPD (慢性閉塞性肺疾患)に関する情報サイト (copd-jp.com)
合計点数が4点以上あった方はCOPDの可能性があるので、呼吸器内科を受診して相談してみることをおすすめします。
COPDの検査と診断について
呼吸機能検査
COPD患者は呼吸機能検査(スパイロメーター)によって診断します。この検査では、努力性肺活量(息をできるだけたくさん吸った後に思いっきり吐いてどれだけ多くの息が吐けるか、肺の大きさ。)や1秒量(1秒間にどれだけ息が吐けるか、息を吐く勢い。)などをチェックします。COPD患者では息を吐く機能が低下しています。
COPDと気管支喘息
COPDの症状とよく似た症状が出る病気もあり注意が必要です。正確に診断するために呼吸機能検査に加えて胸部X線、必要に応じて胸部CT検査を行う場合もあります。検査だけでなく、喫煙歴や症状などの問診から得られる情報も重要です。
気管支喘息はCOPDとよく似た症状が出る病気であり、両者の区別は難しいことがあります。しかも、COPDと気管支喘息は同時に存在することもあり、喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)と言われます。
気管支喘息とCOPDを区別するためには呼気一酸化窒素検査(FeNO検査)が非常に有用で、当院でも導入しています。
COPDの治療
まず禁煙を
COPDの治療で最も大切なことは『禁煙』です。COPDはタバコを続けている間はどんどん悪化していきます。「いまさら止めても遅いのでは…」と思う方もおられますが、タバコを止められれば病状が悪化していく事は防げますので、いつ止めても遅すぎることはありません。
「喫煙が肺に悪いのは分かっているし、止めたい。でも止められない」という方も多いです。タバコにはニコチンという依存性物質が含まれているためです。そのような場合には禁煙外来での治療をおすすめします。
吸入薬による治療
COPDの治療の基本は吸入薬です。吸入薬には気管支拡張薬が含まれており、気管支を広げて呼吸を楽にする作用があります。気管支喘息がオーバーラップしている場合や、COPDが重症の場合などは吸入ステロイドを使用することもあります。
吸入薬には多数の種類がありますが、病状や吸入薬の効果、使いやすさなど考え一人ひとりに合わせた治療を考えます。前立腺肥大症や緑内障を持っておられる方は吸入薬の選択に注意が必要な場合がありますので、主治医と相談するようにしましょう。
その他の治療
痰が多い場合や痰がひっかかって咳が出る方には症状に合わせて去痰薬や鎮咳薬なども使用します。病状が進行してしまい、慢性的に低酸素状態が続くようになった場合には在宅酸素療法(HOT)を行うこともあります。
最後に
残念ながら、長年の喫煙により壊れてしまった肺や気管支は「タバコを吸い始める前の状態」に戻ることはありません。でも、COPDは早期に診断し、治療を続けることで「肺をこれ以上悪くしないようにする」「息切れなどの症状を改善し、生き生きと過ごす」ことができます。
「最近、息切れが気になる」「痰がよく絡んでしんどい」などの症状がある場合は呼吸器内科医に相談してみることをおすすめします。
草津栗東みらい内科クリニック 院長 梅谷 俊介
・日本内科学会 総合内科専門医
・日本呼吸器学会 呼吸器専門医
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