減塩だけじゃない?血圧を下げるための6つの生活習慣
健診などで、「血圧が高い」と言われたことがありませんか?
高血圧症は日本で約1000万人の方が治療を受けている、もっともよくある病気です。しかし、血圧を測定しなければ気づかないので実際の患者は4000万人以上いるのではないかと試算されています。
高血圧の発症には加齢や遺伝的要因(血圧が上がりやすい体質)も関与しますが、生活習慣によって血圧が上がったり下がったりすることも分かっています。
この記事では、高血圧症で治療しているけど生活習慣の改善で血圧を下げたい、血圧が高めで気になっているという方に血圧が下がる生活のポイントを解説していきます。
どれくらい高ければ、高血圧?
140/90mmHg以上の血圧が「高血圧」です。放置しておくと、心臓病や脳卒中などの発症リスクになるため、受診して相談されることをおすすめします。
130〜139/85〜89mmHgの血圧を「高値血圧」と言います。いわゆる「血圧高め」の状態ですので、まずは生活習慣を見直しましょう。
血圧が下がる生活習慣、6つのポイント
血圧は生活習慣の影響を強く受けます。逆に言うと生活習慣を変えることで血圧が下がることが期待できます。
血圧に影響を与える生活習慣の6つのポイント(食事、塩分、運動、体重、飲酒、喫煙)について解説していきます。
血圧低下が期待できる食事、DASHとは?
血圧が高い方に特におすすめしたい食事のポイントは、野菜と果物を多くとることです。大豆やナッツなどの豆類もおすすめです。これらの食品に多く含まれる、カリウムやマグネシウムなどのミネラル、食物繊維は塩分を体から排出させる機能があり、血圧を下げる効果があります。
逆に減らした方がいい食品は、脂身の多い赤身肉(牛や豚)、ソーセージやベーコンなどの加工肉、脂や糖分が多く含まれるスナック菓子やジュースなどです。
このような「野菜や果物を多くとり、肉や脂を減らす食生活」はDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)と呼ばれています。DASHにより高血圧症患者の血圧が平均11.4mHg/5.5mmHg下がったと報告されています。
また、DASHは高血圧症だけでなく、糖尿病や高脂血症といった他の生活習慣病の改善効果も期待できます。
塩分を控えめにする
塩分と高血圧には密接な関係があり、塩分をとればとるほど血圧は上がりやすくなります。高血圧症の方はなるべく塩分摂取を控えた方がよく、高血圧症の方は1日の塩分摂取を6g以下にすることがすすめられています。
特に「塩分感受性高血圧」と言われる、塩分の影響を受けやすい高血圧症の方は塩分摂取を減らす事で大きく血圧を下げることができます。塩分感受性高血圧は欧米の人よりも日本人に多いと言われており、また日本人の食生活は塩分摂取が多いので、減塩の効果がより期待できます。
「いままでの生活よりも塩分を3g減らす」を最初の目標にするといいと思います。ラーメンの汁を飲まなければ3g減らせます。加工食品は塩分が多く、減らせば減塩になります。ハムやベーコンは2枚で1g、ちくわは1本で1g、漬物は3切れで1g含まれています。出来そうな減塩から少しずつ始めてみましょう。
定期的に運動をしましょう
運動療法は高血圧症を改善するといわれています。また習慣的な有酸素運動により、高血圧患者においても収縮期血圧を8.3mmHg低下、拡張期血圧を5.2mmHg低下させる効果があったとする報告もあります。これは降圧薬に匹敵する効果と言えます。
特におすすめなのが有酸素運動で、ジョギングや水泳、サイクリングなど好きな運動を選ぶとよいでしょう。運動を始めるのはハードルが高いと感じる日常生活で歩く時間を増やすようにするだけでも有効です。
食べ過ぎ、肥満に注意
肥満の方はそうでない人と比べると2から3倍も高血圧症が多いと言われており、注意が必要です。食べ過ぎるとカロリーと一緒に塩分摂取も多くなるため、血圧が上がってしまいやすくなります。また、内臓脂肪が多いと、交感神経が優位になりやすく血圧が上がりやすくなると言われています。
そして肥満があると高血圧症だけでなく、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病、心臓病や脳卒中などの病気のリスクが高くなることにも注意が必要です。
過度の飲酒は血圧を高くします
お酒を飲んでいるときには、血管が拡張して一時的に血圧が下がります。しかし、アルコールが体から抜けると血圧は上昇し、トータルでは血圧は上がります。
飲酒量が多ければ多いほど、血圧の上がり幅が大きいこともわかっています。アルコールを多量に摂取する人は特に要注意で脳出血のリスクも高くなります。
逆に、飲酒量を減らせば、血圧が下がることが期待できます。高血圧症を治療中の方、健診で血圧が高いと指摘された方は、お酒を減らすことを考えてみてください。
禁煙しましょう
タバコの煙に含まれるニコチンには血管収縮作用があり、血圧を上昇させたり心拍数を増加させます。もちろん加熱式タバコにもニコチンは含まれているので同様に血圧が高くなります。そして禁煙することで血圧は低下することも分かっています。
血圧を上げる効果だけでなく、喫煙により動脈硬化が進行することも問題です。高血圧症は心臓病や脳卒中の原因になりますが、喫煙はそのリスクを相乗効果で高くします。血圧が高くて気になる方は禁煙についても考えてみましょう。
最後に
高血圧はほとんど自覚症状がなく、放置していれば脳卒中や心臓病などの重大な病気の原因になることから、「サイレントキラー」と呼ばれています。健診などで血圧が高いと指摘された場合には、放っておかずに受診して相談しましょう。
高血圧の方は通院を継続してお薬での血圧のコントロールをつづけることが重要ですが、治療を続けることと同じく生活習慣を改善することも大切です。生活習慣を見直すことでお薬を減らしたり、時にはお薬がいらなくなるかもしれません。血圧が高めで気になる方はできることから少しずつ始めてみましょう。
草津栗東みらい内科クリニック 院長 梅谷 俊介
・日本内科学会 総合内科専門医
・日本呼吸器学会 呼吸器専門医