体質から改善するアレルギー治療、気管支喘息とアレルゲン免疫療法について
気管支喘息とアレルギー性鼻炎は、同じ気道のアレルギー疾患で互いに深い関係にあります。喘息患者の約7割がアレルギー性鼻炎を持っていると報告されていますが、アレルギー性鼻炎の治療をしっかり行うことで、喘息の症状がよくなることも知られています。
近年、アレルギー性鼻炎に対するアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)が広く行われるようになりましたが、この治療が喘息のコントロール改善に役立つことが分かり注目を集めています。そこで今回は、喘息に対するアレルゲン免疫療法について、治療の対象になる方はどんな方か、その期待される効果や治療の実際などについて解説していきます。
喘息とアレルギーの関係は?
喘息は気道の慢性炎症を背景に、咳や痰、喘鳴(呼吸の音がヒューヒューと鳴る)などの症状が発作的に起きる病気です。
喘息は大きく分けて、「アトピー型喘息」と「非アトピー型喘息」の2つに分類されますが、アトピー型喘息は環境アレルゲン(ダニや花粉、カビなど)に対するアレルギー反応が原因となっており、アレルゲンの曝露により症状が悪化します。
アトピー型喘息は小児期に発症した喘息に多く、逆に非アトピー型喘息は成人してから発症した喘息に多いとされています。またアトピー型喘息には、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎など他のアレルギー性疾患が同時にあることが多いことも特徴の一つです。
アレルゲン免疫療法とは
アレルゲン免疫療法とは、アレルギー疾患の原因になっている物質(アレルゲン)を少量ずつ投与することで、アレルギー症状を緩和させる治療のことをいいます。アレルゲン免疫療法のうち、舌の下にアレルゲンを投与する治療を舌下免疫療法と言います。
舌下免疫療法は、以下の2つのアレルゲンによるアレルギー性鼻炎に対して行われています。
☑ ダニ(ヤケヒョウダニ、コナヒョウダニ)
☑ スギ花粉
喘息に対するアレルゲン免疫療法に期待される効果は?
これまでの喘息治療には、気管支を拡張させ症状を緩和する治療(発作に対する治療)、喘息の本態である気道炎症をコントロールする治療(発作を予防する治療)がありましたが、アトピー型喘息の原因であるアレルギー反応を改善させる治療はありませんでした。
そんな中、アレルギー性鼻炎に対して行われているアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)はアトピー型喘息の治療にも役立つのではないかと注目されています。
喘息治療におけるアレルゲン免疫療法の位置づけ
「喘息予防・管理ガイドライン2021:日本アレルギー学会」によると、アレルゲン免疫療法は、基本治療に追加して行う治療と位置づけられています。また、喘息の重症度を問わず対象になる可能性があります。
喘息の治療をアレルゲン免疫療法だけで行うことはありませんが、喘息の基本治療をしっかり行いながら、アレルギー性鼻炎がある方にアレルゲン免疫療法を追加することで、喘息の症状を改善させる効果が期待できます。
アレルゲン免疫療法の対象になる喘息患者は?
喘息患者の中でアレルゲン免疫療法の対象となる方は、スギ花粉症、ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎の患者です。くしゃみ、鼻水や鼻づまりなどの症状があり、皮膚反応テストや血液検査でアレルギーの確定診断をする必要があります。
また、妊娠中や授乳中、ステロイドを使用中など免疫不全状態の方などは治療対象にならなかったり、現在服用している薬の内容によってはアレルゲン免疫療法を行えない場合があります。
また、喘息発作が出ているなど、病状が安定していない方にはアレルゲン免疫療法を開始できないため、吸入薬等の治療で十分に安定した病状にしておく必要があります。
舌下免疫療法の実際
舌下免疫療法に使用される薬剤は以下の2つです。
・シダキュア(スギ花粉アレルギー)
・ミティキュア(ダニアレルギー)
舌下免疫療法を継続すると7〜8割の方に効果が出ると報告されています。逆に言うと、治療を続けても効果が出ない場合があることは理解しておく必要があります。
舌下免疫療法の治療の対象となる方は?
まずは、舌下免疫療法の対象になるかどうかを確認します。治療を開始するためには以下の条件のすべてを満たす必要があります。
☑ アレルギー性鼻炎の症状がある方
☑ 血液検査などの検査でスギ花粉アレルギー、ダニアレルギーの確定診断がついた方
☑ 薬を毎日忘れず服用できる方
☑ 毎月1回の定期受診が可能な方
喘息患者にアレルゲン免疫療法を開始する場合には、喘息の病状が十分に安定していることや、一定以上の呼吸機能が維持されていることも必要な条件になります。
舌下免疫療法を開始できる季節は?
シダキュア(スギ花粉)の治療開始時期はスギ花粉飛散時期を避ける必要があるため、6月から12月までの間に治療をスタートすることが適切です。ミティキュア(ダニ)はどの季節からでも開始できます。
舌下免疫療法の治療期間は?
舌下免疫療法の治療期間は3年~5年が目安になります。治療を継続していると少しずつアレルゲンに対する反応が改善していきますが、その効果を確かなものにするためには時間がかかるためです。3~5年間しっかり治療が継続できていれば、治療が終了した後にも効果は長期間維持されることが期待できます。
まとめ
アレルゲン免疫療法は比較的新しいアレルギー性鼻炎の治療法ですが、喘息についても症状を安定させたり、喘息の治療薬を減らしたりする効果が期待されます。
治療の対象がスギ花粉、ダニアレルギーがある方のみ限定されている事や、3~5年と長い期間治療を継続する必要がある事など、デメリットも理解しておく必要があります。
当院でもアレルギー性鼻炎や、アレルギー性鼻炎を合併した喘息の方を対象に、舌下免疫療法を取り扱っていく予定です。喘息の症状でお困りの方やアレルギー性鼻炎、花粉症の症状でお悩みの方は是非ご相談ください。
草津栗東みらい内科クリニック 院長 梅谷 俊介
・日本内科学会 総合内科専門医
・日本呼吸器学会 呼吸器専門医
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