それほど健康に悪くない?加熱式タバコについて、現在わかっていること。|草津栗東みらい内科クリニック|栗東市小柿の内科、呼吸器内科

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それほど健康に悪くない?加熱式タバコについて、現在わかっていること。|草津栗東みらい内科クリニック|栗東市小柿の内科、呼吸器内科

それほど健康に悪くない?加熱式タバコについて、現在わかっていること。

私(院長)は呼吸器内科医なので、患者さんと喫煙の事について話すことがよくあります。基本的にどのような患者さんでも禁煙をおすすめしているのですが、「でも、電子タバコ(加熱式タバコ)に替えたから大丈夫でしょ?」「電子タバコ(加熱式タバコ)にも害はあるの?」と質問されることがよくあります。

加熱式タバコは発売から日が浅く、まだまだ分かっていないことも多いのですが、現時点で分かっていることについて解説していこうと思います。

加熱式タバコとは?

加熱式タバコとは、タバコ葉を燃焼するのではなく、加熱することでニコチンを含むエアロゾルを発生させるタバコのことです。日本では、IQOS(アイコス)、glo(グロー)、Ploom TECH(プルームテック)が市販されています。

ちなみに、電子タバコとはニコチンを含む液体を電熱線により加熱し発生したエアロゾルを吸引する器具のことを指します。日本国内では電子タバコは規制されているため市販されていません。

紙巻きタバコと加熱式タバコ

紙巻きタバコが健康に悪いということはよく知られていますが、加熱式タバコではどうでしょうか?

ニコチン摂取は紙巻きタバコと同程度

ニコチンには血管収縮作用があり、高血圧や動脈硬化の原因となったり、心臓病(心筋梗塞や狭心症)のリスクを高めることが分かっています。またニコチンは強力な依存性物質でもあります。

加熱式タバコには紙巻きタバコとほぼ同量のニコチンが含まれているため、ニコチンによる健康への影響は紙巻きタバコと同等と推測されます。

妊娠中に加熱式タバコを使用するべきではない

紙巻きタバコと同様に、加熱式タバコを使用している妊婦には妊娠高血圧が多く、低体重出生が多いことが報告されています。※
妊娠が判明した方や妊娠を希望されている方は紙巻きタバコ、加熱式タバコを問わず禁煙することが望ましいと考えられます。
※BMJ Open. 2021 Sep 21;11(9):e052976.

長期的な健康リスクに関してはまだ分かっていない

シェアがもっとも高く、代表的な加熱式タバコであるアイコスが日本に登場したのは2014年のことで、全国的に発売されるようになったのは2016年です。そのため、長期的な健康リスクについては分かっていません。

紙巻きタバコと比べて、発がん性が低いかどうかは分からない

加熱式タバコは煙が少ない分、紙巻きタバコに含まれている一部の発がん性物質は軽減されています。しかしながら、紙巻きタバコに含まれていない発がん性物質が含まれていることや、紙巻きタバコよりむしろ多く含まれている発がん性物質もあることも分かっているため、加熱式タバコが紙巻きタバコよりも発がん性が低いとは言えません。

また、実際にがんが発生するリスクが増えるかどうかを調べるためには相当な期間が必要であり、加熱式タバコの発がんリスクがどれくらいなのかは不明ですが、吸わない人と比すればがんのリスクは高くなると考えられています。

加熱式タバコは禁煙の役にたたない

禁煙する前段階として、まず紙巻タバコを加熱式タバコに替えてみるという人は結構おられます。しかしながら、加熱式タバコは禁煙の役には立たず、むしろ完全な禁煙を遠ざけてしまう可能性があります。

加熱式タバコに含まれる依存性物質ニコチンは紙巻きタバコと同等に含まれているため依存性は軽減されていません。そして、加熱式タバコは煙が発生せずに匂いも比較的少ないことから、様々な紙巻きタバコよりも使用するハードルが低い(吸いやすい)と言えます。

禁煙を目指すのであれば、加熱式タバコは使用しないことをおすすめします。

加熱式タバコによる受動喫煙

今のところ、加熱式タバコでは煙が出ないため紙巻きタバコと比べると受動喫煙は少ないと考えられていますが、煙が出ないからといって有害物質がなくなっている訳ではありません。

実際に加熱式タバコの受動喫煙により、喉の痛みが発生したり喘息発作が引き起こされる事例は報告されていますので、紙巻きタバコを吸うべきではないような場面では加熱式タバコは控えることが望ましいと思います。

最後に

加熱式タバコから発生する有害物質は紙巻きタバコと比較すると全体としては少ないと報告されていますが、健康への影響が少ないかどうか、特に長期的な健康リスクについては分かっていないのが現状です。少なくとも害がないということはなさそうです。

加熱式タバコを使用されている方にも、健康への懸念や費用面から禁煙したいと希望される方がおられます。ニコチンが持つ依存性から禁煙が難しい場合もあり、その場合は医療機関での禁煙外来での治療もおすすめします。

 

草津栗東みらい内科クリニック 院長 梅谷 俊介
・日本内科学会 総合内科専門医
・日本呼吸器学会 呼吸器専門医

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